FUMA Contemporary Tokyo | BUNKYO ART

Yoshitoshi Kanemaki Exhibition

空蝉センシビリティ

 2月6日 (土) - 2月7日 (水) | 版画・ドローイング作品
 2月20日 (土) - 3月6日 (土) | 木彫作品

この度、フマコンテンポラリートーキョー | 文京アートでは「金巻芳俊展 空蝉センシビリティ」を開催いたします。日本では4年ぶりの個展となります。ご高覧頂きますようご案内申し上げます。

FUMA Contemporary Tokyo | BUNKYO ART is going to hold The Yoshitoshi Kanemaki Exhibition.

 

Yoshitoshi Kanemaki

金巻氏は1972年千葉県生まれ。1999年多摩美術大学美術学部彫刻学科卒業。2012年、損保ジャパン美術財団選抜奨励展にて新作秀作賞を受賞。その期に前後して作品の評価は高まって行きます。国内外における作品の人気の上昇に伴い、発表の機会を多数得る事となり、現在、作品ご希望者の購入待ちは10年にも及んでいます。日本はもとより、台湾、中国、香港、アメリカ、カナダ、フランス、ドイツ、英国など、お客様からのオファーが絶えません。

なぜ、金巻氏の作品が国境を越えてこれほどまでに注目を集めるのでしょう。その理由は様々であると考えられますが、やはり作品のコンセプトの核である「アンビバレンス」ではないかと思われます。「アンビバレンス(ambivalence)」とは、心理学用語で愛憎感情、つまり相反矛盾する心理が両立する特異な感情を同時に持ち、相反する態度を同時に示すことです。作家はそれを彼独自の世界で定義し直し、木彫作品として表現しています。その始まりは、美術大学における西洋美術的な教育で重視されるマッス(量塊)やムーブマン(動的表現)に基づくフィジカルな表現だけでは成しえない、よりメンタルな表現を行うにはどうしたらよいだろうか、という煩悶にあったようです。
 
彫刻でありながらも彫刻的ではない表現、その相反する在り様を試行する中で実験的に生まれたのが、2008年の《共振ジェミニ》です。同作のテーマは、対極にありながらも同居する感情と事物、時のブレ、つまり二律背反です。《共振ジェミニ》に対し「アンビバレンス」という言葉で批評されたレビューを読んだ金巻氏は、コンセプトと造形がピタリと合致した手応えを感じたそうです。当時、大学に勤務し公募団体にも所属していた作家は、組織の中では言えない本音も多かった、と述懐します。またサブカルチャーへのリスペクトなども視野に入れた同時代性を反映したくとも、国内の美術界の固定化した評価軸に基づくそれらへの蔑視に阻まれ続けたジレンマも長らく抱えていた、とも。
 
このように、本来の自分とは異なる自分が、状況や環境に応じて存在してしまう事、それらのペルソナ(心理学用語における自己の「外的側面」、状況に適応するための仮面)は時に自己矛盾を生み葛藤をも生じさせます。しかし、その全てが複雑なパズルのように組み合わさった在り様こそが、一人の人間の総体であります。―― 以降、金巻氏の制作はその事を明確に意識したものとなり、通奏低音となって作品の方向性を決定づけます。
タイトルに「アンビバレンス」や「ペルソナ」を冠したシリーズはもちろん、移ろう感情の在り様とその豊かさを表現する「カプリス」シリーズも然りです。特に「カプリス」シリーズにおける十一面観音や阿修羅像にも通じる造形表現は、日本の木彫史を継承し、現
代的に発展させたものとして、[*1]2018年の「めがねと旅する美術展」(青森県立美術館、静岡県立美術館ほ、島根県立石見美術館)、[*2]2019年の「美少女の美術展」(北師美術館/台北)において大きな話題を呼び、作家の代名詞ともなっています。
*1「めがねと旅する美術展」(青森県立美術館、静岡県立美術館、島根県立石見美術館)出品作
円環カプリス | 楠 | H110 x 50 x 57 cm
*2「美少女の美術史展」(北師美術館/台湾)
 
また、東日本大震災を機に制作するようになった派生シリーズ「メメント・モリ」(ラテン語で「死を忘れるなかれ」という意味の警句)もまた、「生」と「死」について同様の方法論でアプローチしています。作家は、「アンビバレンス」という言葉を使い始めた当初、その本来の意味に沿ったコンセプトを構築していましたが、制作を進めるにつれ、それを一人の人間に内在する「心の多様性」として拡大解釈していきました。そうすることによって、より多くの人達に『本当のあなたはこうなのでは?』という問いかけをする作品になって行きました。
空刻メメント・モリ | 榧(カヤ)、楠(クス) | H230 x 56 x 56 cm
「美男におわす」(埼玉県立美術館)出品作

 
[*3]今はSNSなどの発展により、自分を自由に表現できる媒体も増えました。カルチャーやジェンダーにおけるマイノリティへの認知や理解も、且つてとは比較にならないほど深めて来ているかもしれません。一方、であるからこそ「私」という自らの個性に深く向き合う必要性があること、コンプレックスを超克しなければならない場面も増えてきているのかもしれません。グローバリズムが浸透した現代において、その状況はボーダーレスと言えましょう。だからこそ金巻氏の作品における「多様性」の肯定は、非常に大きく重要なメッセージとして世界中の人々の心に響くのではないでしょうか。
                   
今展では会期を前期と後期に分け、それぞれ大きく異なる内容の展示を予定しています。前期では、主に金巻芳俊作品の「これから」のビジョンが示されます。具体的には、昨年新たなプロジェクトとしてスタートし、ともに数時間で完売したフィギュア作品と版画作品の第二弾を紹介します。特に版画作品は新たな木彫作品の構想画でもある為、興味が尽きません。[*4] 中でも、空間が割れて万華鏡のような様相をみせる作品では、「人も景色も刹那に移ろいゆく」様子をこれまでとは異質の造形で表現するためのアプローチになっています。二次元では表現可能であっても三次元では難しい、でもそれをどう克服するか、作家は日々葛藤しています。「アンビバレンス」から始まった「彫刻なのに彫刻的でない表現」の未来形に、いやがうえにも期待が高まります。
 
そして後期は、「これまで」の集大成ともいうべき「カプリス」シリーズの彫刻を中心に木彫作品の展示となります。作家自身「『カプリス』シリーズの完成形」と語る作品です。作家は、今回のカプリスを等身大の作品とすることにこだわりました。それによって、彫刻なのに彫刻ではないような、もっと言えば人の気配が濃厚になります。そこに人がいる気配があるのに、でも人ではない。そんな体感によって、人間関係の距離感を誤認識してしまうような作品を意図しています。それは、人と人の距離感を考え直さざるをえない現状を反映した表現であると同時に、一人の人間の中の「多様性」が内在する「一人称」の表現であった「アンビバレンス」が、人と人の距離感や関係性の問題をはらんだ「他人称」の表現へと変容していく予感を孕んでいます。
 
金巻芳俊氏の制作において重要なマイルストーンとなる今展、ご高覧いただけましたら幸甚です。
 
2021年1月吉日 FUMA Contemporary Tokyo
 
 玉響カプリス  |  楠  |  H190 x 82 x 82 cm
 玉輪唱ジオメトリ  |  檜  |  H75 x 25.5 x 25.5 cm
 
[*3]エチュード・コンプレックス03 | Etude Complex  03  | リトグラフ | Lithograph | S. 75.5 x 55.5 cm
[*4]エチュード・プリズム02 | Etude Prism 02 | リトグラフ | Lithograph | S. 94.1 x 74.6 cm
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